真夏の太陽【~前編~】


今まで書いていた小説のデータが消え、その気分転換に書きました。
一人称の感覚を取り戻したかったという理由もあります。
内容は某エロゲに影響を受けたもので、ロリものです。最初は滅茶苦茶にしてハイエース、とかクジラックス的思考を巡らせていたのですが、どうしてこうなった。エロは今のところないです。あと変態要素が含まれるのでご注意。引かないでください。


【真夏の太陽】

 田舎の空は晴れ渡っていて、遮蔽物の少ない地には万遍なく陽が当たる。どこへ行こうにも鬱陶しく追いかけてくる陽射しに、僕は辟易した。
 やっぱり、外なんかに出るんじゃなかった。自らの選択を悔いて、家に戻ろうかと思い直す。
 自室は快適だ。ネットもあるし、テレビだってある。眠気が湧いて来たらそれを解消するためのベッドも設えられている。楽園だ。
しかしその楽園に十年以上も居座っているのだから、さすがに飽きてきた。最近ではほとんどベッドで寝ている。起きたら惰性でパソコンを立ち上げ、溜まった性欲を発散する。
 何の意味や目的もない日々を過ごしていた僕は、ふと外に出てみようと思い立った。転機となる出来事が転がっているかもしれない。そんな漫画じみた展開を期待していたのだが、どうやら現実は非情であった。
 この近くに自販機があったから、ひとまずそこで喉を潤していこう。僕は暗い気持ちのままとぼとぼ通りを歩いた。人気のない道には油蝉の大合唱が響き渡っている。頭がおかしくなりそうだった。
「……ん?」
 自販機の設置された公園内に足を踏み入れて、僕は気付いた。
 自分以外に、人がいる。小学生くらいの女の子だった。この世の穢れを払い落としたような純白のワンピースに身を包んでいる。つるつるした頬を桜色に染め上げ、激しい動きで踊っている。ほっそりとした脚が振り上がるたび、健康的な太ももの内奥に白い布地が垣間見え、僕の目は釘付けとなった。
「――はっ、はっ、ふっ!」
 断続的に浅い息を吐く表情は、思いのほか険しい。気の強そうな顔には、大粒の汗が浮いていた。
 一言でいえば、もうムチャクチャ可愛い。僕の妹にしてあげたいと思ったが、それは叶わぬ夢なので火照った頭から追い出し、当初の目的通り自販機へと向かった。
 小銭がなかったので、千円札を食わせる。お目当ての炭酸飲料を選ぶ。
「はっ、はぁっ」
 お釣りを貰おうとする僕の背後で、少女の浅い息遣いが聞こえてきた。
 ……あの女の子、喉乾いてそうだな。
 なにせ炎天下である。しかも汗を流すほどの運動量。もし熱中症になってしまったら、どうしよう。見過ごした僕にも責任が発生するんじゃないだろうか。
 散々迷ったあげく、僕は炭酸飲料の他にスポーツドリンクを一本購入した。未だ激しいダンスをしている少女の元に、震える足を進める。もし不審者扱いとかされたらどうしよう。
「あ、あの」
 その危険性は、当然あった。しかし僕は、どうしてもあの少女とお近づきになりたかったのだ。さっきの熱中症うんぬんは方便である。僕は自他ともに認めるどうしようもないクズ人間だ。
「あ、あの!」
 二回声をかけて、ようやく少女がこちらに気付いた。不審そうな目を向けてくるが、ここで怯むわけにはいかない。
 震え出しそうになる膝に力を込め、僕は言った。
「運動しているの? すごい汗だね」
「見れば分かるでしょ、おじさん」
「なっ……」
 少女の花唇から、とんでもない単語が聞こえた。……お、おじさんって。僕はこう見えても二十代半ばである。まだオッサンではないはずだ。
「よ、良かったらだけど、これいる?」
 買ってきたスポーツドリンクを差し出すと、女の子は意外そうな目でこちらを見た。
「え、なに、私にくれるの? タダで?」
「うん、お金は取らないよ」
「それじゃあ……私にヘンな事とか、したり?」
 可憐な外見に似合わず、女の子はマセていた。それとも学校の教育が行き渡っているのだろうか。
 複雑な気持ちになりつつ、僕は左右に首を振った。
「そんなこと、しないって。ただ、君が疲れてるんじゃないかと思ってね。なにせこの暑さだから、熱中症とか脱水症状になったら大変だ」
「……ふーん。なら、貰っておこうかな」
 そう言って、少女は僕が差し出したスポーツドリンクを受け取った。一瞬ではあったけど、汗ばんだ女の子の手が、僕の右手に触れた。異性の手に触れたのなんて、もうずいぶんと昔の気がする。少女の、ほっそりとした精緻な指の造りは、僕に回顧の念と背徳的な気分を抱かせた。昂奮が高まってくる。
「……ん、んっ、んく」
 少女はペットボトルに口を付けて、勢いよく中身を飲んでいる。
 眩いくらいに真っ白な喉が、こくこくと動いていた。幼さの中にも艶美なものを感じ、僕はじっとその姿を見つめ続けた。
 あっという間にペットボトルの中身を飲み干すと、少女は満足げに息を吐く。
 そして、空の容器を差し出してきた。
「はあ、美味しかった。ありがとね、おじさん」
「あはは、それは良かった……」
 苦笑しつつ、空のペットボトルを受け取る。――いや待て。
「これ、なにかな」
「見れば分かるでしょ、ペットボトル」
「いやそうじゃなくてね、何でこれを僕に?」
「だって全部飲んだし、もういらないから、捨ててよ」
「……っ」
 僕は、ぐっと奥歯をかみしめた。我慢、するんだ……っ!
「わ、分かった。僕が捨ててくるね」
 崩れそうになる笑顔を保ち、僕は公園の外に向かった。少女が「ごみ箱は自販機の横だけど?」と親切に教えてくれたが、その言葉に耳を貸すことなく、僕は自宅への道を急いだ。


 家に帰ると、僕は自室への扉を開けた。当然、鍵は掛ける。
「はあ、はあ……あ、あのガキめ……僕にこ、こんなものを寄こして捨ててこいだなんて……っ!」
 興奮しながら、僕はズボンのチャックを下ろしていた。外気に触れたモノは、戒めから解放されたように勢いよく跳ねる。亀頭が透明な液で濡れていた。
「はあ、はあ、ほんと最高だよ!」
 僕は蓋を外したペットボトルの口に、鼻先を近づけた。
「少女の唾液がぁ……はあぁぁぁ、良い匂いだぁぁっ!」
 ペットボトルの口からは、スポーツドリンクの匂いしか感じ取れなかった。それでも確かに、あの少女が唇を付けていたのだ。小さな舌も、そこに触れていただろう。
 僕はとうとう堪えきれなくなって、少女の唾液が付いたペットボトルの口部に、自分のものを重ねた。
「小さな女の子と間接キスぅぅぅっ!」
 ……少女の味がした。
 僕の昂奮は否応なく高まって、扱き続けていた肉棒の先端から、勢いよく精液が飛び出した。モノがびくんびくんっと反り返り、粘ついた白濁をまき散らす。
「ふぅ、至高のひと時だった……」
 床に散らばった精液をティッシュで拭き取りつつ、僕は考えていた。
 ――また公園に行ったら、あの女の子と会えるだろうか。



 結論から言うと、僕の考えは正しかった。少女は炎天下の中、一人で踊っていた。
「はあ、ふぅ、はっ――」
 ダイエットだろうか? しかし少女は細いように見える。激しい動きをして捲り上がった服の内から、平らなお腹が露わになっていた。
「ふっ、はっ――」
 艶やかな黒髪が、珠のような汗で濡れている。その様子を遠巻きから眺めていた僕だったが、我慢できずに公園内に踏み込んでいった。
 自販機で炭酸飲料とスポーツドリンクを一本ずつ購入し、少女の元へ向かう。彼女は肩で息をしているところだった。
「お疲れ様」
 自然な感じで、スポーツドリンクを差し出した。しかし驚いたように少女が飛び上がると、僕から距離をとった。うん、当然の反応だと思います。
「誰かと思ったら、昨日のおじさんじゃん。なに、私に用でもあるの?」
 警戒心の乗った眼差しが、ためつすがめつ僕を見回している。ここで怪しまれてはダメだ。
 僕は平静を装って答えた。
「いや、特にそういうわけじゃないんだけど」
「ふーん。なら、どうしてここに来るの? しかも、こうして飲み物までくれるし……」
 女の子の視線が、手元のスポーツドリンクに注がれた。もしかして欲しいのかな?
「はい」
「え、あ、ありがと……」
 素直に受け取り、ごくごく飲み始めた。どうやら昨日と同じように、喉が渇いていたらしい。少女はあっという間にスポーツドリンクを飲み干した。それから、あっと何かに気付いたように口許を拭い、
「そうじゃなくて! どうしてここに来るの!」
 話の軌道を戻されてしまった。仕方がないので、即興で考えた嘘を話す。
「実は、健康のためにウォーキングをしていてね。自宅から公園までがコースなんだ。まあ始めたのは昨日からなんだけど……」
 そう言って、僕は炭酸飲料の入ったペットボトルを呷る。シュワシュワとした刺激が口の中で弾け、喉に滑り落ちていく。くぅ、この感覚……やっぱりコーラは最高だ。
「健康のためなのに、炭酸なんだ」
「え、あ……まあ、それくらいは良いでしょ」
「適当だなぁ……」
 少女は呆れた目をする。そこに、先ほどまでの警戒心は見当たらない。
「まあ、僕のことはいいんだけどさ。公園に寄ると、君が運動をしているから何事かと思ってね。この暑さだし、体を動かすなら家でもいいんじゃない?」
 そう質問すると、少女の顔が曇った。何か気に障ることでも言ったか、と自分の発言を思い返す。
 特に何もないと思うが……しかし女の子は「運動」と呟いた。その声には怒気だけでなく、悔しさのような感情も混じっていた。
「違う、そんなんじゃない! これはダンスなの!」
「ダンス……まあ、そうだけど。でも、曲がなかったよ?」
「それは……っ。見れば分かるでしょ!」
 どうやら、この子の口癖は「見れば分かる」のようだ。
「ダンスにしたって、なにもこんな暑さの中、しかも外でやらなくても良いんじゃない?」
「やだ!」
「いやいや、だって家の中は涼しいし、快適だよ?」
「家じゃ意味ないし!」
 と、言われても。僕は、この女の子が何を言わんとしているのか、いまいち分からなかった。
 僕が沈黙していると、女の子はしょんぼりと肩を落とし、近くのブランコに向かった。小さなお尻を下ろして、キコキコと静かに揺れる。子供が無邪気に遊んでいるという気は微塵もしなく、その姿からは哀愁が漂っていた。
「ええと……どうして君は、この公園で踊っていたの?」
 どうしようもなく、僕は核心に迫る質問をした。
 俯き加減の少女が、ちらと顔を持ち上げる。
「知りたい?」
「え……」
 その目には期待の色が揺れていた。先ほどまでの快活さが嘘のように、寂しげな上目遣いを向けてくる。あざと可愛い。
「知りたい、かな」
「ふふん。しょーがないなぁ~」
 そう言うと一転して、少女は勢いをつけてブランコから飛び降りる。あ、今パンツ見えた。白の生地に薄いブルーのラインが走っている。リボンのような飾りも、確かに見えた気がする。
「私、風花かりん。アイドル目指してるんだ」
 初めて少女――かりんがそう名乗った。衝撃的な発言もオマケして。
「え、アイドルだって?」
「そう、アイドル。煌びやかなスポットライトを浴びて、どの女の子よりも輝くの。すごいでしょ」
 さも自分がすごいような言い回しだが、彼女は今のところ一般人である。その点を突っ込んでみた。
「確かにすごいけど、まだなってないんだよね?」
「それは……むむっ。とにかく、いずれそうなる予定なの!」
「ははあ……」
 結果、逆ギレされてしまう。彼女は怒った顔を、少し斜めに傾けた。
「だから私、こうして公園で踊ってたんだ」
「練習のため?」
「それだけだったら家の中でするじゃん」
 確かにそうだ。かりんは口を尖らせ、そっぽを向いた。その横顔に、ほんのりと赤味が差している。
「公園で踊るのは、練習だけじゃなくて……スカウトを待っていたの」
「え、なんだって?」
「だから、スカウトっ」
「へ、スカウトって……あの?」
「うん……」
 しおらしく答える。どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。
「だけど、誰も芸能関係者の人とか……来なかった。代わりに、ヘンなおじさんは来たけど」
「僕はまだ二十代だよ」
「私から見たらおじさんなの」
「せめて、お兄さんに訂正してくれないかな?」
「そんな顔なのに?」
「ぐっ……」
 説得に失敗してしまった。いや、それよりもスカウトねえ……。
 僕は思ったままを口にした。
「スカウトの人なんて、こんなところにやって来ないよ」
「何で? もっと目立つ場所に行かないと、ダメ? ここの公園って、けっこう有名だと思うんだけど」
「いや、まあこの町では名が知れているけどさ」
 僕らが住んでいるこの町は、身も蓋もない言い方をすれば辺境の片田舎だ。むろん芸能事務所なんか近くに建っていないし、業界の人もわざわざこんな辺鄙な土地まで足を運ばないだろう。かりんが公園で行っている涙ぐましい努力は、はっきり言って無駄なのだ。
 僕は、懇切丁寧にその事実を説明した。彼女が傷つかぬよう、言葉も選んだ。しかし話の内容を理解するとかりんは驚いたように固まって、丸い瞳を見開いた。
 そこに、悲しみの影が広がっていく。
「私、ここで頑張っても、アイドルになれないの?」
「……残念な話だけど、そうなるね」
 僕は居た堪れない気持ちになって、胸を押さえた。
「そっか。アイドルに、なれないんだ」
「…………」
「……夢、だったんだけどな」
「――っ!」
 ……夢、か。とても懐かしい響きだ。数年前までは、僕も夢を追いかけていた。結局、叶わなくてニートになったけどね。
「――いや」
 別に、そういうつもりは毛頭なかった。ただ僕は、この子と一緒にいたい。自分の活動が無意味なものだと悟った少女は、もう公園に来ることはないだろう。つまり、このままではお別れなのだ。
「方法は、あるよ」
 まだ、エッチの一つもしていない。こんな最底辺の人生である。無垢たる少女を穢して牢屋にぶち込まれるのなら本望だ。
「え――」
 輝きを失いかけた瞳が、僕を見た。……微かな、今にも消え入りそうな光が、瞬いている。
「僕に考えがある」
 その光を見つめ返しながら、僕は微笑んだ。邪悪なその笑みに、しかし少女は気付いていない。希望を得た顔で、「ほんとっ!」と訊いてくる。
 小学生の純真さにつけ込む犯罪者予備軍――つまりこの僕はにっこりと笑った。彼女の綺麗な瞳に、僕の姿はどう映っているのだろうか?


 相変わらず蒸し暑い昼下がり。両親が仕事に出かけているので、家の中は閑散としていた。社会から落伍した僕はいつものように自室へと籠り、爛れた生活を送る――。
 そんな廃人同然の日々も、今日でお終いだ! 
 なぜなら七畳ほどの自室には可愛らしいお客が訪れていた。それも、女子小学生というプレミア感のある肩書まで付いている。
「うえ、何この部屋。汚いんだけど……」
 何を隠そう、風花かりん(美少女)である。彼女は部屋の惨状を目の当たりにして、丸い頬を引き攣らせていた。
 僕は、意気込んで言った。
「さあ、どうぞ」
「こんな部屋、入れるわけないでしょっ!」
 彼女の嫌悪感に満ちた叫びが響く。
 確かにペットボトルやコンビニ弁当の容器、読み終えた小説などが散乱している。辛うじて足の踏み場はあるが、とても衛生的には見えない。何かに感染してしまいそうだ。
「それに、この部屋……すんすん」
 彼女は鼻をならした。そして、顔をしかめる。
「なんか、ヘンな臭いする……。これ、なんか木から漂ってくるのに似てる……」
 かりんは鼻を摘まみながら説明した。
 彼女が指摘する臭いの正体とは、僕の生活臭とゴミ箱に詰め込んだオナティッシュ――その二つが絶妙な塩梅でブレンドされたものだ。当人である僕はまったく気づかなかったのだが、第三者からすると臭うらしい。かりんは「ヴェぇ……」と嘔吐いていた。
「やっぱり帰る」
 かりんは回れ右をした。遠ざかっていく華奢な肩を、僕は慌てて掴んだ。
「ちょっと待って! アイドルになれないよ!?」
「よく考えたら、なんか怪しいし。こんな部屋の人が、私をプロデュース出来るわけがない」
「掃除する! ちゃんと綺麗にするから!」
「……何でそんなに慌ててるの? というか、私がアイドルになれなくても、おじさんには関係ないじゃん」
「大ありだよ!」
「なんで?」
 僕の手を振り払い、ジロっと睨みながら後ずさる。
「それは、かりんちゃんが可愛いからだよ!」
「ふぇ……?」
 正直に告げると、かりんは顔を赤くして立ち止まった。ロングの髪に人差し指を巻き付け、クルクルと弄ぶ。「キモイ!」とか罵倒されなくて良かった。
「ど、どの辺が?」
 微かに赤らんだその顔は、やはり満更でもなさそう。僕は畳みかけるようにして言葉を継いだ。
「さながら天使のように愛くるしい顔といい、その手入れの行き届いたサラサラの黒髪も良いね! こんな美少女がアイドルとして日の目を見ないなんて人類にとって大きな損失だ! ああ嘆かわしい……こんな現実ってあんまりだ。かりんちゃんも、そう思うよね?」
「え? そ、それは……そうかも」
「ねっ、でしょ? だから僕が、君をアイドルにしてあげるよ!」
 そう――僕は昨日、彼女をプロデュースすると豪語したのだ。そして立派なアイドルに導いてあげるとも約束した。
 具体的な考えは明かしていなかったが、かりんは僕の発した「プロデュース」という単語に食いついた。そして今日、女子小学生を自室まで招聘するに至ったのである。マジ僕って天才。
「ということで、入ってどうぞ」
 僕は部屋の窓を開け放ち、床に散らばっているゴミを隅っこへ押しやった。それだけでは心もとないので、ファブリーズで室内の空気を浄化する。
 そうして、やっとかりんちゃんは僕の部屋に入ってくれた。感動ものである。女子小学生のほっそりとしたおみ足が、自室のフローリングを踏んでいる。かりんちゃんは床に座ろうとして、数秒くらい固まった後、側のベッドに腰を下ろした。その行為一つだけでも、相当の葛藤があったらしい。かりんちゃんは苦いものを呑み込んだ顔で、僕に流し目を送る。
「それで、どうやって私はアイドルになるの? ここって田舎で、東京に行かないとそういう事務所もないんでしょ」
 かりんちゃんの半信半疑な一瞥を受けて、僕は大きく首肯した。
「そうだね! だけど、こんな田舎でも君をアイドルに出来る方法がある!」
「……東京に、芸能関係の知り合いがいるとか?」
「いないよ」
「ダメじゃん! どうすんのさ!」
「まあまあ、落ち着きなよかりんちゃん。ここは何の脚光も浴びない片田舎でバスも数時間に一本しか通らない辺鄙な町だけど、それでもインターネッツは世界と繋がっているんだぜ。これを利用しない手はない!」
「いんたー……なに?」
「インターネットだよ。かりんちゃんの携帯だって、それと繋がっているでしょ? 検索とか出来てさ」
「ん、ああ。スマホのことね。それを先に言ってよ」
 今の子にはインターネットが通じないのか。かりんちゃんは得心顔で耳に掛かった髪を払う。
「そのネットを、どう使うの?」
「かりんちゃんは動画投稿サイトを知っているかな?」
 質問には答えず、逆に問い返してみた。かりんちゃんはニンマリと笑みを浮かべた。
「当ったり前でしょ! イケメンな人とか見てるし」
「あ、そう……」
 何だよ、そいつ。どうせ顔だけで内容はくっそつまらないんだろうな。たぶん低学年の子にしかうけていない。
 そんな偏見を抱きつつも、僕は机に置いたノートパソコンを持ち出し、かぱっとご開帳する。
「このパソコンを使って、かりんちゃんの動画を投稿するんだ。間違いなく人気ユーザーになれるよ」
 そう得意げに言うが、かりんちゃんにはいまいちピンと来ないらしく、反応も素っ気ない。
「私の動画……。それって、何か喋ればいいの? うん、美味しい! とか。ていうか、そこで人気になってもアイドルとか関係ないじゃん」
「甘いよ、かりんちゃん」
 人差し指を左右に振った。……かりんちゃんがドン引きの様相を呈しているが、気にしたら負けである。
「アイドルといえば、何を思い浮かべる?」
「そりゃ、歌と踊りかな」
「そう! それだよ!」
 僕はすっくと立ち上がった。呆けるかりんちゃんを見下ろして、ビシッと人差し指を突きつける。
「歌と踊り、それが動画の内容だ! かりんちゃんは自作の歌と踊りを披露して、その動画をサイトに投稿するんだ。その反響を聞きつけた芸能事務所関係の人が、たちまち君をスカウトするだろう!」
 魅力的な単語を散りばめて、いかにもな青写真を見せつけた。かりんちゃんの疑わし気な瞳が、光を取り戻したように輝く。
 どうやら、僕の提案に否やはないらしい。ほんと小学生って単純だ。もちろんそんな考えなどおくびにも出さず、僕は笑顔を貼りつけたまま言う。
「曲に関しては、僕の友達にDTMが出来る奴がいるから、その人に任せようと思う。踊りに関しては、二人で考えていこう。こう見えても、僕は二次元のアイドルとか好きだからね」
「いや、いかにもって顔してるけど?」
「……まあ、それは置いといて。さっそく、友達に連絡してみるよ」
 僕はスマホを引っ張り出した。かりんちゃんは待ちきれないといった様子で、両足をぷらぷら揺らしている。かなりの上機嫌だった。
「もしもし、僕だけど――」
 
 こうして、僕は女子小学生の専属プロデューサーとなった。

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